Yシャツクライシス

広く見渡せる荒野。
閑散とした街。
ここから時間との勝負が始まる。
俺はこの足で、戦いの道を歩み行く。



がさがさがさがさ
Yシャツがない!!


学校が終わって家に帰らずにバイトに行きたいから、Yシャツを毎日持ってきてるんだけど、今日に限って忘れた…*1
研究室で気づいてよかった。
でも3限に授業を受けて家に帰るとぎりぎりなんだよね。


それでも一回帰ってYシャツをとってこないとな。





というわけで地元の駅。
バイトに間に合うには、26分後の電車に乗らなくてはならない。
家から駅まで歩いて10〜12分。
つまり最小で2分の余裕しかない。
Yシャツをとって荷物をおく時間を考えると、かなり危機が迫っている。


しかし、俺には武器がある。
それがこの両足だ。



高校時代、朝の弱い俺は普通に行くとちょっと遅刻する時間に電車を乗っていた。
俺はあんまり遅刻はしたくなかったが、あべし*2みたいに走りたくはない。
そこで俺が身につけたのは、歩くスピードだ。
これは今でも人に負けないと思ってる。




さあ、時間との死闘の始まりだ。
建物のない空き地を最短距離で歩く。
足を大またで、全神経を足に、歩くことだけに集中させる。
小学生低学年の自転車を徒歩で追い越して、俺は勢いに乗り加速する。


しかし、この奥義に体は悲鳴を上げる。
全神経を集中させた足はほんの数分で痛みを伴い張りが出る。
そう、体力を削られた後のこどもの国の最後の坂のように踏ん張りが効かなくなる。*3
「くっ、120%はさすがにキツイか。 もってくれ、俺の足!!」



なんとか家に着いた。
野菜ジュースを飲み、トイレに行き、もう1度駅へ。



さあ、こっからが勝負。
ここで乗り遅れたら、バイトに行くのにかなり遅くなってしまう。
急ごう!


!!!!!
あ、足が言うことを聞かない!?
完全に消耗した足には、神経を集中することができず、加速ができない。
なんてこった、こんなに長時間120%を使っていたことはなかったから…
「意地を見せてくれ、俺の足!」



ふぅ、電車が来る2分前に着いた。
これで遅刻は絶対にないな。
もう、汗びしょびしょ…
もうYシャツ忘れないようにしないとな…

*1:自宅とバイト先は2駅離れてる。

*2:同じ高校の男子。大抵駅から学校まで走ってた。

*3:すいみーの高校は矛浜市(仮名)のこどもの国でマラソン大会をする。アップダウンが激しく、ゴール直前にはかなり急で長い下り坂が待っている。疲労している足では下り坂で踏ん張りが効かず意に反して加速する危険なコース。